映画

『シェイプ・オブ・ウォーター』

今回ご紹介する映画は

『シェイプ・オブ・ウォーター』

2017年のアカデミー賞では作品賞など4部門を受賞した恋愛(?)映画です!

監督は「パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」で名を馳せた
ギレルモ・デル・トロです。

SFやホラーのイメージが強いこの監督ですが、今回はなんと恋愛モノ!

この映画に見所は何と言っても世界観や、アートスタイル!それが最高に素敵です。

舞台は1960年代の冷戦下のアメリカなんですが、劇中に出てくる蓄音機や
ブラウン管のテレビなどの家具のデザイン、レンガ調の町並みとそこに浮かぶネオン、
オールドスタイルな服装に身を包む登場人物たちとそこに流れるオールディーズ。

画面の端々にまでこだわりを感じる世界が広がっています。

また、ティム・バートンの世界をちょっと暗くしたようなダークファンタジーの
匂いも感じさせてくれて私は大好きですね。

ジメジメとした空気感は少し伊藤潤二のホラー漫画の世界も混じっているような感じもします。

そしてタイトルに「ウォーター」と入ってるだけに、水やそれを使った表現や演出にも
かなり力が入っています。

雨やそれに伴うジメジメとした感触や、水中での浮遊感を与えてくるカメラワークによって
見終わったあなたはきっと自分も濡れているのではないかという感覚に陥ることでしょう。

ストーリーを要約するとこの物語は「逆人魚姫」なのです。

アンデルセンの伽話である人魚姫は人間の王子に恋をした人魚が魔女の秘薬で声を失う代わりに
人間の姿となり、王子のもとへ向かい・・・という悲恋を描いた恋物語なのですが、
今作は半魚人のオスと出会った聾唖の女性が織りなす恋物語なのです。

とある研究所の清掃員として働く聾唖の独身女性イライザは、隣人の冴えない絵かきのジャイルズ、
同僚の明朗快活な女性ゼルダなどの友人と慎ましやかに日々を生きていました。

そんなある日、研究所に何やら怪しげな生物の入ったカプセルが運び込まれ、
研究員やそれらを監視する高圧的な軍人が次々と彼女の日常に波を立てていきます。

そして、そこに米ソ冷戦時の国の思惑や、カプセルの中身であった半魚人とイライザの心の交流が描かれ、
愛憎や友情が波乱を巻き起こし、物語は渦を巻いていくのです。

ここからネタバレ注意!

ひょんなことからイライザは半魚人と交流を持ち、仲を深めていくのですが、
半魚人が始末されるという噂を聞いたイライザは彼を研究所から脱走させようとします。

それを実行時の緊張感は非常に高く、とてもハラハラします。

そして彼を自宅へと匿うのですが、なんとイライザと半魚人は性的な関係を持ってしまうのです!

これにはかなり衝撃を受けました(笑)

半魚人の見た目はかなりリアルというか、ヌルヌルしていそうというか・・・
なのにも関わらずその壁を突破していけるイライザ、あんたアッパレだよという感じです。

また、研究所に潜伏していたイライザに協力的だったソ連側のスパイがいたのですが、
彼はいいキャラしていましたね。研究員でもあった彼には科学者としての信念も持っており、
その末に始末されてしまうんですが、正直彼を殺す必要があったのかは疑問です。

信念を持ったキャラといえばもう一人、高圧的な軍人がいたのですが、
ぼくは正直彼のことを少し応援していました(笑)

彼の言動は正直ひどいものなんですが、やることなすこと不幸ばかりで少し可哀想なんですよね。

指が腐ったり、上司に左遷させられたり、新車がボロボロになったり、終いには半魚人に首裂かれてしまいますからね、
ホント不憫です。

物語のラストでイライザと半魚人は海の中で結ばれるのですがその描写はとてもロマンチックです。

イライザの首の古傷がエラになるんですが、その表現はうまいものだと思いましたね。

この映画のテーマとして私が感じたのは社会的弱者(マイノリティ)たちのラブソングです。

主人公側の登場人物は皆、マイノリティだったのです。

主人公は障害者で隣人はゲイ、同僚は黒人で協力者は移民。ましてや恋人は人間ですら無い。

そんな彼らが権力者である軍人に虐げられながらも起こした奇跡はきっとあなたを魅了することでしょう。