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地獄への道は善意で舗装されている『ミッドサマー』 感想&レビュー

皆様こんにちは、はまさんすーです

今回ご紹介するのは

『ミッドサマー』です

画像引用サイト:ミッドサマー公式サイト

私は好き度:
オススメ度:
お花キレイ度:

(星5つ満点)

「ミッドサマー」は2019年にアメリカで公開された、アメリカ・スウェーデン合作のホラー映画です。

監督は「ヘレディタリー/継承」で鮮烈な長編映画デビューを飾ったアリ・アスター。

主演には「ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたフローレンス・ピュー。

原題はスウェーデン語で夏至祭(ミィドソンマル)を意味するそうです。

トラウマを抱えた女性が恋人や友人たちと訪れたスウェーデンの奥地で現地の人々が催す独特な夏至祭に参加し、

そこで遭遇する悪夢のような出来事を描いたホラー作品となってます。

画像引用サイト:映画.com

 

 

ミッドサマー作品情報

 

公開日

2020年2月21日

製作国

アメリカ合衆国・スウェーデン

上映時間

148分(劇場公開版)

171分(ディレクターズ・カット版)

スタッフ・キャスト

監督

アリ・アスター

脚本

アリ・アスター

出演者

フローレンス・ピュー

ジャック・レイナー

ウィリアム・ジャクソン・ハーパー

ヴィルヘルム・ブロングヘン

ウィル・ポールター

ビョルン・アンドレセン

公式サイト

ミッドサマー公式サイト

VOD可能サイト

なし

ミッドサマーあらすじ

大学生のダニーは精神疾患を持つ妹を持ち、彼女の言動に日々精神をすり減らしていた。

恋人のクリスチャンに相談するのだが、それも彼の重荷になっているのではないかと不安でしょうがない。

ある日、ダニーは妹から自殺をほのめかすようなメールを受け取る。

それによってさらに精神が不安定となるダニーをクリスチャンは内心厄介に思いながらも別れを切り出せずにいた。

周囲の悪友たちも彼にそんな女と別れるように促しているのだった。

ダニーのもとに警察から連絡が入る。

それは妹が両親を道連れに無理心中を図ったというものだった。

家族を失いダニーの心は壊れかけてしまう。

彼女にはクリスチャンだけが心の支えとなるのだった。

事件から数ヶ月後。

ダニーはクリスチャンが友人たちと夏期休暇を利用しスウェーデンの夏至祭に参加しようとしていることを知る。

ダニーはそれを知らされなかったことでクリスチャンを詰ってしまう。

申し訳無さそうにするクリスチャンだったが彼はどうやら行く決心が固いようだった。

クリスチャンはおざなりな態度でダニーをその旅行に誘う。

友人たちにはダニーは来るはずがないけど、表面上は歓迎してくれと根回しをするクリスチャン。

ただ、友人たちの一人、スウェーデンの夏至祭の地の出身であるペレは本心からダニーを歓迎しているようだった。

クリスチャンと友人たちは人類学専攻の学生でその土地の文化と、

90年に一度というその地の夏至祭を学ぶのも楽しみの一つのようであった。

結局その旅行に参加することにしたダニーは友人たちとともにスウェーデンの奥地へと向かうのだった。

ペレの出身地でもあるスウェーデンの奥地、ホルガ村は美しい花が咲き乱れ、白夜で太陽が沈まない楽園のような土地であった。

親切な住民たちが陽気に歌い踊り、ダニーたちを歓迎してくれていた。

しかし、夏至祭に参加するうちに彼らはこの村の狂気へと蝕まれていく。

それは、想像を絶する悪夢の始まりであった。

画像引用サイト:映画.com

ミッドサマーみどころ

まず、風景が最高にキレイで素晴らしいです!

スウェーデンののどかな山間で幻想的な儀式が行われるさまはまさにこの世の楽園と言ってもいいのではないでしょうか。

とまぁ、万人向けの見どころはここまでにしておきまして、

「へレディタリー/継承」をご覧の方ならわかるでしょうが、見るものの精神を直接攻撃してくるような描写が開幕から盛り沢山でございます。

ダニーを襲う不幸などはもう見るのもツラいです。

そしてなんといってもダニーとクリスチャンの関係ですよね。

この二人のなんとも言えない気まず~い関係がめちゃくちゃストレスを感じます!

恋人とケンカ別れをしたことがあるような人ならみんな同じような状況になったことがあるんじゃないかという

胃がキリキリするようなリアルな逼迫感が満載でございます。

別れ際のカップルには絶対見せちゃいけないタイプの映画ですし、仲良しカップルでも気まずくなること請け合いです。

カップルで見た方にはぜひその感想を聞いてみたいです(笑)

そしてわたしが一番気になるのは、この映画の感想は男女で全く異なるんじゃないか?ということです。

女性はダニー目線で物語を追うのでクリスチャンを始め男性サイドのことを胡乱げに見そうですし、

男性はクリスチャン側に立つのでダニーとの付き合いの難しさが共感を呼んだりするのではないでしょうか?

この映画はカップルの「あるある」を究極に意地悪に悪趣味に走らせたもののような気がします。

その味付けとしてスウェーデンの奥地の怪しい村の行事に巻き込まれるというイベントを下敷きにしてるのではないでしょうか。

その村でのイベントも色々衝撃的すぎてすごいんですけどね・・・。

心をキリキリと切りつけてくるこの悪趣味な映画は好きな人は大好きなんじゃないでしょうか?

ホラー苦手な私でも十分楽しめましたので、幽霊とかお化け苦手って人でも行けるかも知れません。

ただ、グロ耐性がない方にはおすすめできませんが・・・。

あ、ここで言う悪趣味は私的にはホラー映画に対しては褒め言葉ですのでご容赦お願いいたします・・・。

画像引用サイト:映画.com

ミッドサマーネタバレ感想

 

 

好きな所

クリスチャンとその一行の面々はキャラが立っててみんな好きなんですが、

私が特に好きなのはマークです。

出てきた当初から下世話な話ばっかりで典型的なおバカ大学生って感じでこいつだけホラー映画のやられ役の典型って感じが好きです。

しまいには御神木にションベン引っ掛けて村人にくっそ憎まれるってのが痛快ですね。

図らずも村人の邪教にションベン引っ掛けて一矢報いてたって思えるのも好きな部分の一つですね(笑)

黒人のジョシュもいいですよねえ。

村に伝わるルーン文字や風習を独自解釈してあそこの風習と一致する!と言ってはみんなに無視されてるっていうのがいいです。

もしかして、彼が一致するって言ってた風習もホントに当たってて、この村の宗教のチグハグさを暗に示していた可能性もあります。

人類学専攻の割には研究の仕方に文化への敬意が感じられないと言うか、そりゃ殺さるるわって行為をするマヌケさもいいです。

死んで花壇に足が植えられてるのも犬神家の一族を思い出して印象深いです。

クリスチャンもクリスチャンで一番マトモかと思ったらジョシュの研究テーマを横取りしようとしたり意外と独善的なところがありますよね。

彼の最後の表情には拍手を贈りたいです。

熊の生皮を着させられて燃やされるときの表情は本当に迫真でした。

最後の所、BGM消してみてみると彼のうめき声が聞こえるそうですね。

恐ろしすぎるわ!(笑)

ダニーもダニーでめんどくさい女性っていったら怒られそうですけどトラウマ抱えた難しい女性を見事に演じてます。

終盤では、ずっと踊り続けられる体力お化けってこともわかりましたし(笑)

確かに村の女性達と比べると肉付きがいいですし栄養状態も良かったんですかね?

最後にペレですが・・・、こいつなぁ・・。

まじで「地獄への道は善意で舗装されている」を体現するようなキャラでしたね。

この言葉の解釈には諸説あるんですが、ここでは文字通りの意味で使ってます。

笑顔で耳触りの良いことばかり言ってくるやつほど恐ろしい。

狂信者ここに極まれり!ですよね。

あと絶対ダニーのこと狙ってますよね。

映画の後でダニーのことスケコマシてると思います。

ダニーと友人たちの関係も気まずくていいですよね。

互いにウザいと思い合ってるんだろうなと透けて見えます。

ダニーとクリスチャンのすれ違いもなんかリアルでありそうな感じでしたね。

周囲の問題を気にするダニーと研究を優先したいクリスチャンって感じで。

しまいにはハメられたんだけどハメてたクリスチャンを見て決定的に気持ちが離れたのでしょう。

最後、小屋に彼らの剥がされた皮が運び込まれるんですが、誰が誰か当てるのが難しいです。

途中で消えたカップルも含まれてるし、どれがどれやらずっと考えてしまいました。

それにしても消えたカップルの男性が一番酷い死に方してません?

生きたまま肺を体外に出されちゃってて、気づいた時にはうわぁ・・・となりました。

あと、彼らと一緒に小屋で燃やされた村人の最後も悲惨ですよね。

苦痛を和らげてくれるイチイの汁、全然効いてねーじゃねーか!

村人の獲物を逃さない手腕はすごいですよね。

まず人類学専攻ってことで異文化は受け入れなきゃって思いやすい奴らを連れてくるペレの慧眼もすごいし、

聖典を盗んだ容疑を被せて、それを晴らさせるために別々の行動を取りやすくさせて孤立させるっていうのがスムーズすぎます。

しかし、この監督は人を不安にさせる画作りが天才的にうまいです。

上下逆さまになる村への移動風景や、終盤の微妙にグニャグニャうごめく会食風景など

見ているこっちの精神をガリガリ削ってくる雰囲気満載で素晴らしいです。

ラストのダニーの笑顔も意味深ですよね。

トラウマからの解放なのか、心が壊れ果ててしまったのか。

アスター監督は「ダニーは狂気に堕ちた者だけが味わえる喜びに屈した。ダニーは自己を完全に失い、

ついに自由を得た。それは恐ろしいことでもあり、美しいことでもある」と脚本に書き付けているそうです。

私的にはずっとすがるものを欲していたダニーが、ホルガ村という自分を受け入れ讃えてくれる真の家族が見つかった、

真の寄る辺が見つかったという笑顔なのかなと思いました。

あと、私が大好きなシーンは「オースティン・パワーズの上映会始まるわよー」のシーンです。

唐突すぎて笑っちゃいました。

私が一番恐怖したのは、ダニーがクリスチャンたちに村に置き去りにされるのを夢で見るというシーンです。

夢と分かる前は「え、これマジでヤバいじゃん・・・。」となり、心臓がバクバクしました。

これによって私は誰かに見知らぬ不安な土地に取り残されるのを一番怖がってるんだなと自覚しました。

トラウマだよ!

画像引用サイト:映画.com

気になった所

村人たち薬の扱いに長けすぎだろ(笑)

暗殺者集団か忍者の里かっていうレベルでダニーたちを薬漬けにする手腕は手慣れすぎててヤバいです。

途中で逃げ出そうとするカップルの彼女を説得する理由もちょっとくるしくないですか?(笑)

直前までの自殺幇助の罪は無視しておいてトラックは道交法守らないといけないから・・。って

そっちの法律は守るんかーい!って思うでしょ!

クリスチャンと村娘のセックスシーンもあれはちょっとやりすぎでしょ(笑)

セックスしてる周囲でなんでオバハンたちが喘いでるねん!

あんなの絶対萎えるでしょ・・・。ちょっと笑っちゃいましたよ。

しかもそこからの「赤ちゃんを感じるわ!」のスピード感はすごいですよね。

奇形児の子も物語に絶対絡んでくるぞ、って思ってたら全然絡まなかったですね。

メイクイーンの女の子たちの写真もいっぱいありすぎじゃないですか?

90年に一度って言ってたけど実はあの祭り毎年やってるんじゃ?

あのカルト村意外と歴史浅い可能性もありますよね。

それともメイクイーンは毎年決めてて、9人捧げる大夏至祭だけが90年に一度なんですかね?

あと、この映画って9日間あるお祭りのうちの5日目くらいまでしか出てきてませんよね?

ということはまだ半分くらいこの狂気のお祭りは続くってことなのでしょうか?怖すぎる・・・。

画像引用サイト:映画.com

さいごに

この映画の撮影、絶対楽しいですよね。

あんなロケーションのいいところでお祭りできる撮影とか、内容気にしなければ絶対楽しいやつです。

この映画は実は現代社会への風刺がいろいろ入っていたそうです。

スウェーデンの移民政策や内情を風刺する要素があったみたいなのですが、私は全然気が付きませんでした。

ただ、スウェーデンの風評被害ヤバいんじゃないの?とは思いましたが(笑)

アメリカ版「TRICK」って言われたりもするこの映画ですが、構造は似ているかも知れませんが、その中身がちょっと違いすぎませんかね。

でもここに山田や上田がいるのはちょっと見てみたいと思いました(笑)

個人的にはラストは「ドッグヴィル」みたいにこの邪悪な村を木っ端微塵に焼き払ってもらいたかったです。

まぁ、この映画はこの映画で確実に私の心に傷を残していった素晴らしい映画のひとつなのは間違いありません・・・。

あと薬物はダメ、ゼッタイ!

この映画はディレクターズ・カット版も公開されており、より悪趣味なシーンが追加されてたり、

一部モザイクがなかったりするそうなので気になる方はそちらもチェックしてみてはどうでしょうか。

笑顔であなたに近寄ってくる人にはお気をつけください。

悪魔はいつも笑顔でやってくるのですから・・・。

それではみなさんまたお会いしましょう!