映画

『コーヒーをめぐる冒険』

皆様こんにちは、はまさんすーです

今回ご紹介するのは

『コーヒーをめぐる冒険』です


「コーヒーをめぐる冒険」は2012年に公開されたドイツ映画です。

ドイツ出身のヤン・オーレ・ゲルスター監督の初めての長編映画となっています。

「素粒子」で有名となったトム・シリングが主演を演じており、ドイツアカデミー賞で、作品賞など主要6部門を獲得しました。

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ

2年前に大学をやめ、ぶらぶらとベルリンの街で暮らしている青年・ニコ。

彼は日々、様々なことについて考えながら生きているのだった。

そんなある日の朝、彼は彼女と喧嘩してしまう。

小さな諍いから起こったその喧嘩によって、彼は日課であるモーニングコーヒーを飲み逃してしまうのだった。

ここから、彼のコーヒーをめぐる冒険の一日が幕を開けるのだった。

この物語はそんなニコのついてない一日をすこし滑稽に、すこしペーソスを含んだ様子で、

オフビートな感じで描かれた映画となっています。

この映画の魅力は、なんと言ってもその空気感です。

モノクロで撮影されたベルリンの町並みがなんと言ってもおしゃれなのです。

最初は白黒映画か~、なんか見るの疲れそう。とか思っていたのですが、この映画は全くそんなことはなく、

肩肘をまったく張らなくてもいい、リラックスした感じで見ていられる映画です。

時間も85分と長過ぎず、短すぎず、ふとした時に見るのにちょうどいい作品となっています。

また、流れる音楽もジャジーな感じでこれまたシャレオツなんですよね。

休日の午後などにゆるーくゆったりと見るのにちょうどいい映画です。

モノクロのドイツ映画と言うと、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」などが思い起こされますが、

あちらは、ロマンチックな人間模様、恋模様を描いていた作品であるのに対し、

こちらは一人の青年の転々と進むオフビートコメディとなっており、毛色が全く違います。

しかし、両者に共通するのはセリフが少ない、といった点です。

言葉少なに粛々と進められていく様子がこの2作品の共通点となっており、同じような雰囲気を感じさせてくれます。

ドイツ映画をたくさん見てきているわけではございませんが、これらの映画から、ドイツの人々の雰囲気、気風などが感じられますね。

また、作中に出てくる登場人物たち、友人知人、親族や知り合ったばかりの人に至るまでみんながみんな

ひとクセもふたクセもある人ばかりで、それらの人間模様を見ていくのもこの映画の楽しみとなっています。

ここからネタバレ注意!

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恋人と喧嘩したことでモーニングコーヒーを飲み逃したニコだが、その後も、アンラッキーに見舞われ続けます。

飲酒運転で取り上げられた免許を取り戻そうと、適性診断を受けに行くのだが、見事に落第。

気晴らしに入ったカフェでコーヒーを飲もうとするのだが、小銭が足らずここでもコーヒーが飲めないニコ。

ATMから引き出そうとするのだが、親からの仕送りがストップしていたり、俳優の友人とレストランに入ってコーヒーを頼んでも、

図ったかのように、コーヒーマシンのトラブルでコーヒーが飲めない。

友人のツテで映画撮影の見学に行くのだが、そこで見つけたコーヒーポットの中も空っぽ。

親に仕送りのことを聞きに実家に戻るのだが、大学をやめていたことがバレ、援助を打ち切られてしまう。

その後も、元同級生の女の子に会ったり、チンピラに絡まれたり、ナチス政権化を生き抜いた老人と出会ったりと、

ニコは騒動に巻き込まれ続ける。

ベルリンの街を徘徊し、様々なものや人と出会うニコなのだが、どうしてか、コーヒーにはずっと逃げられ続けてしまっていた。

そして、明け方、疲れ切ったニコはようやく早朝のカフェで、美味しい一杯のコーヒーにありつくことができたのであった。

物語は終始、どこか空回りしてしまうニコを追い続けます。

皆さんにも、あらゆることがツイてない一日はありますよね。

なにをやってもうまくいかない、どこへ行ってもうまくやれない。

そんな日を皆さんはどう乗り切りますか?

どんなに辛い一日だとしても、最後に一杯の美味しいコーヒーさえ飲めればそれはいい一日だったといつか思えるのかもしれません。

一杯のコーヒーというちっぽけな幸せが、とても大切な幸せに思える瞬間も人生には訪れるものです。

この映画の原題は「Oh Boy」と言うそうです。

劇中のニコを見てみなさんもきっと「Oh Boy」とつぶやきたくなってしまうことでしょう。

実は私もベルリンではないのですが、ドイツに滞在していたことがあり、この映画を見ていると

その当時のことが思い出されてきて、とても懐かしくなりました。

地下鉄などの電車や駅の様子、カフェが佇む街並み、人々が歩く速度、耳から聞こえてくるドイツ語など、

モノクロだけど、いや、モノクロだからこそ、その時代性を越えて、私に訴えかけてくるものがありました。

この映画は非常に個人的な物語をコメディタッチで描いたものですが、その中には誰もが抱えている人生の悩みや、

喜び、悲哀などが寓意性を持って垣間見えてきます。

どの時代の人間だろうと、どこの生まれの何人だろうと、つらいものはつらいし、

悲しいものは悲しいし、楽しいものは楽しいし、好きなものは好きなのである。

それは、人類が全く違う生物種へと進化でもしない限り変わらないことなのでしょう。

いくら文明が発達しようと、私達人間という生物学的カテゴリーは古代からも中世からも全く変わっていないのであり、

脳みその使い方はうまくなったのかもしれないが、その構造自体はなにも変化していないのです。

古代の赤ん坊を現代に連れてきて育てればそれはもう現代人になるのでありましょう。

様々な新しい概念を切り開いてくれた哲学者たち、文明を推し進めてくれた科学者たち、平和を説いてくれた宗教家や思想家たち。

膨大な量の膨大な積み重ねの上に私達はいまを生きているのです。

その人達のおかげで私は今、美味しいコーヒーが飲めているのです。

その幸せを享受しながら、私は日々、些細なことで苛立ったり、悲しんだり、喜んだりします。

サンキュー先駆者たちよ。また明日もよろしくな。

私達のコーヒーをめぐる冒険は終わりません。

そんな日々にふと、疲れた時は、この映画でも見てコーヒーブレイクと行きましょう。

人生はコーヒーの味のようだ。

ミルクや砂糖はご自由に。

それでは皆さんまたお会いしましょう